クリナップ、朝日ウッドテックと天然木で調理台開発 質感生かし耐久・耐水性

日刊工業新聞Newsウェーブ21 2025/08/29 流通・商社1 23頁 1254字】

クリナップは天然木のキッチンワークトップ(調理台)を木質内装建材メーカーの朝日ウッドテック(大阪市中央区)と共同開発した。中高級価格帯システムキッチン「ステディア」の新製品に実装し、9月1日に発売する。 木材のさわり心地や質感を最大限に生かし、独自の塗装技術で耐久性や耐水性といった課題に対応。 業界初とされる新たな付加価値を発信する。 売上高1450億円以上を目指す2027年3月期までの中期経営計画の達成に「主力のステディア強化が不可欠」(竹内宏クリナップ社長)と位置付ける。

クリナップはシステムキッチンの中級グレードで販売数シェア2位から1位浮上を目指し、ステディアを3年ぶりに拡充する。 商品戦略として顧客が検討初期に抱く理想の空間や暮らしなどの憧れと、成約前に決め手となり得る製品の機能・仕様に着目。 提案中の2段階の顧客心理に対するアプローチを強化し、検討件数を増やして成約率を高める。

検討初期において、天然木ワークトップの既製品にはない新たな価値を訴求する。 機能・仕様面では掃除の手間が課題だったシンクの排水トラップに新機能を追加。 1日3回の自動洗浄で配管内部にたまった封水を入れ替え、ぬめり発生を抑える「かってにクリントラップ」を標準搭載した。 手動操作も可能で、水道代は年間500円程度に抑える。

機能とデザイン性の両面において、自社製品群で中盤に位置するステディアの価値を大幅に拡大する。 情緒的な価値に当たるデザイン面では、洗練を追求した高級価格帯システムキッチン「セントロ」とは真逆の親近感を強化。 自社製品群のすみ分けと競合他社との差別化を図り、新規顧客層を開拓する。

従来のステンレスや人工大理石、セラミックスのワークトップに天然木を追加することで製品バリエーションを拡充する。 朝日ウッドテックは木質のボード材や手すり向けの内装用造作材「ウッドリウム」を23年に投入。 自社展示会を機にクリナップとの共同開発が始動した。 「木の質感を損なわずに耐熱性や耐水性、耐傷性を確保するのは困難」(海堀直樹朝日ウッドテック社長)という課題に対し解決策を探った。

天然木は「キッチンに愛着が湧く一方、当社が追求する『キレイを保つ』価値観とは逆の発想だった」(藤原亨クリナップ常務執行役員開発部門担当)。 そこで調理台に適した強度と柔軟性を両立するため、5層の表面塗装を開発した。 一般的な天然木テーブルの2倍以上の厚さの膜にし、中塗り層には柔軟性のあるウレタン樹脂を採用。 割れにくい塗膜で水が染み込みにくい構造にした。

天然木の質感を十分に引き出すため、ワークトップ前縁は「ハマグリ形状」と呼ばれる緩く丸みのある仕様にした。 見える部分のみ天然木ひき板を使用。 芯材部には木材資源の持続可能な循環につながる計画植林木を採用し環境に配慮した。 キャビネットはステンレス製としている。

新ステディアの消費税抜きの価格は基本プランで118万7000円から。 朝日ウッドテックは今後、クリナップの商品研修に協力し、天然木の価値の周知に努める。


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