テクノポート福井内に主力生産拠点である福井工場(福井県坂井市)を構える旭化学工業。祖業の硫化染料製造で培った硫化水素無毒化の技術を軸に、現在は有機硫黄化合物の受託合成と自社製品の二軸で事業を展開する。 とりわけ、他社が扱いを敬遠しがちな腐食性や臭気の強い化合物、200度C以上の高温反応や高圧力が必要な反応など、特殊条件下の製造を得意とするのが特徴だ。 こうした特徴と柔軟な生産体制が評価され、既存顧客からのリピートに加え、新規の引き合いも相次いでおり、幅広い領域で存在感を示している。
同社は、国内で唯一生産する「1―チオグリセロール」を中心に複数の独自製品を展開する。 カーリング剤(パーマ液)用途に加え、近年は電子材料分野での需要が伸びており、金属不純物を極限まで抑えた高純度グレードを提供して安定した販売を続けている。
同じく国内で唯一生産する「3―メルカプトプロパンスルホン酸ソーダ」やその2量体水溶液は、銅メッキ用平滑剤としての活用が広がり、電池用銅箔など先端分野で採用が進む。
開発を進める多価メルカプタン化合物は、エポキシ樹脂硬化剤や電子部品の洗浄剤、銅薄膜製造など高付加価値分野での引き合いが増えている。 アカデミアと連携し、金属錯体への応用にも挑む。 また、実用化に向け、自社でポットライフ(可使時間)の延長やコスト削減などの課題解決にも取り組んでいる。
受託製造では、高度なマルチプラント体制により多様な案件に応じる。 顧客の大型プラントが稼働するまでの暫定的な生産支援や、そのまま同社で量産まで担うケースなど、柔軟に対応している。
社員の働きやすい環境づくりにも注力する。 昨年は社員旅行を実施し、部署間の交流を深めた。 加えて、健康経営の一環としてボウリングや卓球、ヨガなどの社内イベントを定期的に開催し、心身のリフレッシュを図っている。