クラサス、酢酸誘導品 技術供与を新たな収益源に

化学工業日報 2025/08/29 2頁 944字】

 レゾナックの石油化学事業を分社化し誕生したクラサスケミカルは、酢酸誘導品の製造技術ライセンスを新たな収益源に育成する。中国などで新設される石化コンプレックスで酢酸ビニルモノマー(VAM)などのプラント建設が見込まれ、保有する技術を生かし、エンジニアリング大手の協業で拡大する需要を取り込む。 年1件のペースでの成約を目指し、さらに供与後の触媒の販売でも安定的に利益をあげ、収益基盤の強化につなげる。

 石化市場は中国の新増設にともなう供給過剰などを背景に厳しい環境が続く。 新設されるエチレン設備の誘導品として酢酸ビニルなどが併設されるケースが多く、今後も新規プラントの建設の拡大が想定される。 クラサスケミカルは中国の石化増設を逆手にとって、製造技術ライセンスの商機を広げる。

 これまでアリルアルコール、(VAM)で製造技術ライセンスの実績をあげ、今年も中国の陝煤集団〓林化学への供与を決めた。 2015年に米国エンジニアリング会社KBR(テキサス州)と酢酸系製品の製造技術を共同販売する業務提携を結び、ライセンス供与に取り組んでいる。 引き合いもあり、KBRとの協業で成約を増やしていく。

 技術ライセンスの供与は、契約締結で一時的な収入を得るほか、その後も触媒を供給することで継続的に収益を得られる。 投資やコスト負担がなく、業績のボラティリティ(変動率)を抑えることに寄与する事業として拡大に注力する。

 クラサスケミカルは、新規収益源の創出のほか、オペレーショナル・エクセレンスの深化による利益成長、製品の高付加価値化を成長戦略に据える。 オペレーショナル・エクセレンスの深化では、大分コンビナートのナフサ分解炉の定期修理で、周期を延ばすことを計画中。 連続運転期間を現行の4年から6年に延長する認定取得の準備を進めている。 14年以降トラブル停止がなく、4年連続無事故運転を2度達成している高い設備信頼性を武器に次回大型定修の26年から6年連続運転を構想する。

 製品の高付加価値化は、強みの誘導品事業の拡販を図る。 メガネレンズ用樹脂や香料などの原料に使う高純度アリルアルコールがその一つ。 外販市場でシェア60%を握るトップメーカーの地位にある。 24年8月に生産能力を増強し、高まった供給力を生かし需要を捉える。


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