北陸特集 福井県水素・アンモニアサプライチェーン構想 企業など、敦賀港核にFS作業へ

化学工業日報 2025/08/29 6頁 1829字】

 北陸地域のカーボンニュートラル実現へ−。今年3月、福井県は「福井県水素・アンモニアサプライチェーン構想」を策定、その詳細計画や見通しなどを全面的に公開した。 県内をはじめ北陸全域における水素やアンモニアの需要ポテンシャルを算出するとともに、水素・アンモニアの利用や産業への適用拡大に向けた取り組みをロードマップで示した。 そのサプライチェーン(SC)中核の一つとなるのが、敦賀港となる。 このサプライチェーン構想は、北陸で新しい産業を目指す大きな方向性として示した高速交通・物流網の整備と日本海側の中心に位置する福井を「国土創成の新拠点」とし、その拠点の一つとして敦賀港の役割を高めていくものだ。 福井県も敦賀港を「世界最高水準のスマートポート」へ進化・変革させていくことを重点に掲げ、再生可能エネルギーの日本海側における受け入れ港としての諸機能を整備していく方向。 すでに北陸地域の産業界や経済団体など行政側と一体となり各種の調査事業も始まっている。


 <興和江守など地域化学品商社も協力>

 福井県は23年に、三井物産、北陸電力とともに、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)を利用して水素やアンモニアのSC構築に関連した事業化調査(FS)を開始すると発表。福井県の敦賀市に立地する敦賀港を対象としてFSを実施し、同港の周辺や中心にアンモニア貯蔵タンクやパイプラインなどの供給設備を整備していく地域のサプライ拠点形成の可能性を3者で探っていく方針。 敦賀港の新たな供給拠点化には、アンモニアのFSRU導入やFSRUから供給するアンモニアの利活用先、さらにクレーンなどの港湾で使用される荷役機械・設備への水素電源の導入−といった3テーマが明確にされており、これらの具体的な検討を進めながら、敦賀港のSC拠点形成を目指している。 3者はすでに連携協定を締結しており福井県は水素電源の導入にかかわる調査、三井物産側はFSRU関連、北陸電力はアンモニア利活用関連の検討と取りまとめを主に担っている。 すでに3テーマの詳細な検討や仕様などの段階に進んでいる。

 興和グループの興和江守(福井市、岩佐大秀社長)は、北陸地域における再生エネ由来など次世代燃料にかかわる地域の本格的なFSを開始している。 親会社の興和と一段と連携を密にしながら、海外より再生可能エネルギーからの次世代燃料について、北陸地域における将来的な事業可否を現在、関係企業や行政と連携しながら探っているところだ。 福井県が示している福井県水素・アンモニアサプライチェーン構想など、自治体のこうした動きを背景に、北陸地域も次世代燃料となるアンモニアの需要見通しやメタネーションによる水素ビジネスのポテンシャリティを行政と関連する地域企業が一体となり、探索が始まっている。 興和江守はグリーンテック、ケミカル、エレクトロニクスの既存3事業の拡充・強化と「地域社会に貢献するカーボンニュートラルビジネス」(同社)の有力候補として、こうした次世代燃料についても検討をはじめており、この北陸地域における有力企業の参画・連携なども促しながら、経済性や安定的な供給を目指す次世代燃料供給にかかわるモデルを顧客や市場へ提案していきたい考え。


 <使用ずみストレッチフィルム 水平リサイクル拡大 CO2削減効果400トン超に>

 また、同社は、興和江守グループの江守物流を通じ使用ずみストレッチフィルムの有価回収・再資源化から同フィルムへ再生する「水平リサイクル事業」に乗り出しており、この取り組みが北陸全域へ広がり始めている。北陸コカ・コーラボトリングや興和江守の取引先企業を主にフィルムの回収先企業も複数社に拡大中だ。 江守物流が主となり福井県、石川県、富山県の運送企業や倉庫事業者の地域企業を丹念に回り、現在、3県で10社が、この取り組みに賛同して回収・再資源化協力先となる北陸「水平リサイクルコンソーシアム」も形成している。 今後、この水平リサイクルコンソーシアムの協力先を20から30社へと広げながら、「今年度は回収ストレッチフィルムベースで年間120トン、再資源化のCO2削減効果は400トン以上を見込んでいる」(江守物流)とモノマテリアル回収を前提に回収先企業も一定以上の高い環境意識とモノマテリアル材排出を守っていただける企業」(同)と、環境コストや再資源化への理解を持つ企業との連携強化が地域の水平リサイクルを事業として成立させるポイントとみている。


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