日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)が年初来高値圏を維持するなか、化学セクターでも選好されている銘柄はある。大和証券の梅林秀光氏は「カバーする20社強のうち、株価のパフォーマンスがTOPIXを上回っている企業と下回っている企業は半々くらい」と話す。 このうち上回っているのは「4〜6月期の業績が比較的よかった企業で、素直に選好されているのではないか」と見る。 総合化学では医薬品事業が好調な旭化成と住友化学、ICT事業が想定を上回った三井化学の株価が上昇した。 電子材料ではAI関連材料が成長している東京応化工業や、中国事業が好調な住友ベークライトなどが選好された。
ただし「株式市場は全般に楽観的すぎるのではないか」と警鐘を鳴らす。 とくに梅林氏が警戒するのが、スペシャリティケミカルにおける中国品の台頭だ。 例えば帝人が高い世界シェアを占めるアラミド繊維や、三菱ガス化学が近く欧州新工場を立ち上げるMXDA(メタキシレンジアミン)は、欧州市場に中国品が流入し価格競争が激化している。 「汎用化学品はもちろん、スペシャリティケミカルでも自社の強みと市場環境をよく見極め、構造改革や意思決定を行う必要があろう」と指摘する。
AI向けが堅調な半導体材料の先行きはどう見ているのか。 「AI向けは伸びが続くだろう。 それ以外のスマートフォンやパソコン向けは需要の先食いとみられる動きを含め7〜9月も悪くないが、最終需要が力強く伸びるわけではないため、10〜12月には調整に入るのではないか」と、AI向け以外の息切れを見通す。
そうしたなか、梅林氏は「AI向けで裏付けがある」としてレゾナック・ホールディングス、東京応化工業を注目銘柄に挙げる。 レゾナックは銅張積層板などの半導体後工程材料が先端パッケージ向けに拡大し、課題の黒鉛電極事業についても「追加の構造改革が年内には公表される見通し。 同社を電子材料企業としてみると、来期予想PER(株価収益率)で10〜11倍の株価は評価余地が大きい」と分析する。 東京応化は主力のフォトレジストで前工程のみならず「後工程でも採用が伸びている」点にとくに注目する。
住友ベークライトも注目銘柄に挙げる。 半導体用封止材で世界トップを走るが、「中国の半導体国産化の波に乗り、中国事業が好調だ。 すでに償却が始まっている新工場に生産移管が進めば、収益性がさらに改善する」と期待する。