ファーメランタ、天然由来成分を27年量産

化学工業日報 2025/08/29 1頁 1389字】

 石川県立大学発スタートアップのファーメランタ(石川県野々市市)は微生物発酵で作る植物など天然由来の有用成分の量産を2027年にも始める。複数のパイプライン(製品候補)について植物から抽出する既存製品に比べてコスト優位性があることを確認。 外部の開発・製造受託(CDMO)と連携してスケールアップを検討する。 実証結果を踏まえて量産体制の構築に着手する。

 研究開発や事業開発体制の強化に充てるため、第三者割当増資で15億円を調達した。 既存株主であるベンチャーキャピタル(VC)のビヨンド・ネクスト・ベンチャーズ、エンジェルブリッジの2社のほかに、新規株主としてユニバーサル・マテリアルズ・インキュベーター、慶應イノベーション・イニシアティブなど7社が引き受けた。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募したディープテック・スタートアップ支援事業にも採択され、5億円の助成も受ける。

 ファーメランタは合成生物学の第一人者で共同創業者の一人である石川県立大の南博道教授らの研究成果を事業化する目的で22年10月に設立。 合成生物学は遺伝子や細胞といった生物の構成要素を組み合わせて新たな生物システムを設計・構築する分野で「生物システムのプログラミング」とも呼ばれる。 同社は合成生物学の技術を用いて設計した微生物の発酵で天然由来有用成分を量産する技術開発に取り組む。

 同社の強みは大腸菌内に20個以上の外来遺伝子を導入して複雑な代謝経路を構築し適切に機能を発現させる「多段階遺伝子導入技術」と目的成分を効率良く産生するための細胞機能や細胞システムのチューニング技術だ。 現在、自社のパイプラインや、製薬、化学企業といった共同開発先との案件を含めて10以上のプロジェクトが進む。

 天然由来有効成分は植物にごく微量しか含まれていないものも多く、純度を高める精製などにコストがかかる。 同社の微生物発酵技術では、同じ有用成分を高純度に生産することが可能になる。

 自社のパイプラインである医薬品や農薬原料のアルカロイド類、健康機能性成分のフラボノイド類、食品・化粧品用香料や色素、健康機能性成分のテルペノイド類など複数の有効成分について、既存製品を下回る価格水準で供給可能な生産収量が達成できることを確認。 ベンチスケールの実験で高い再現性も実現した。

 今後はCDMOと連携してスケールアップを図り、サンプル試作と量産化の実証に移行する。 1バッチ当たり数十〜数百キログラムの生産を目標に掲げる。 とくに経営リソースを投入するアルカロイド類はCDMOを活用するかたちで27年の量産を目指す。

 併せて、自社の研究開発体制も強化する。 農林水産省の中小企業イノベーション創出推進事業に採択され、石川県立大の敷地内でパイロットプラントの建設が進行中。 500リットル、3000リットルの培養槽を導入し、26年5月の竣工を予定する。 菌株の開発からスケールアップまで一気通貫で内製できる体制を整え、共同開発先との連携強化に役立てる。

 その先の構想として、最短で28年にも数万リットル規模の培養槽を備える量産工場を新設することも検討中だ。 新規株式公開(IPO)を目指す30年に売上高年250億円の達成を目標に掲げており、柊崎庄吾最高経営責任者(CEO)は「合成生物学によるバイオものづくり産業を先導する存在を目指す」と力を込めた。


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