今春、全国で最も志願者数が多かった大学は千葉県習志野市の千葉工業大だ。一般選抜入試志願者数は延べ16万2005人。 4年連続で2位だったが、ついに11年連続トップだった近畿大を追い抜いた。 受験料の免除、1学科分の受験料で複数の学部学科を併願―。 背景にあったのは高コスパで「受験生ファースト」の改革だった。
千葉工大は創立から80年以上の歴史を持つ私立大で、今春は5学部17学科で約1300人を募集した。 目指すのは「現場のリーダーとなる人材の育成」(入試広報部)だ。
志願者が増えれば優秀な人材を獲得しやすくなると入試改革を徹底した。 2021年度入試から大学入学共通テストを利用した入試の受験料を免除。 併願も可能で、今春は延べ8万人超がこの方式で受けた。
同じ試験日ならば、1学科分の受験料で複数の学部学科を併願できる制度も導入している。 「興味のある学科は、全て判定してあげたかった」と担当者。 「合格の可能性が高まる」と好評だ。
「大学は受験料収入でなく授業料で経営すべき」という理事長の方針が高コスパを実現させる。
受験生ファーストはお金の面だけではない。 試験日前日の午前11時まで出願でき、他の結果を見て「やっぱり受けよう」と直前まで検討できる。
志願者数は日本一になったが、教育関係者から併願の多さを指摘されることも。 今春の共通テスト利用入試では、1人あたり平均6学科を志願したという。
在学生の受け止めは。 情報科学部情報ネットワーク学科3年の今井怜治さん(20)は「無料で興味のある学科に合格できた。 コスパが良かった」と振り返る。 共通テスト利用入試では5学科ほど併願したといい「大学受験はお金がかかるので助かる受験生も多いと思う」と語った。
時代のニーズに合わせた学部学科再編も人気を集める要因だ。 今年4月、工学部に誕生した「宇宙・半導体工学科」は機械工学と電子工学を学び、最先端分野で活躍できる人材を育成する。 説明会に参加した高校3年野嶋一矢さん(17)は「入学してロケットを造ってみたい」と目を輝かせていた。
改革は在学生にも。 留年者数と退学者数を問題視し、補講や教職員によるフォローを始めた。 12年度は留年者が1065人、退学者が507人いたが、24年度はそれぞれ半分以下に減った。
「18歳人口が減っていく中で生き残れる大学にしたい」と担当者。 学生目線の改革をこれからも続ける。