大成建設とケイ・アイ化成(静岡県磐田市、柴田卓社長)は、環境規制化学物質を分解する微生物を粉末状に製剤化し、今秋にもサンプル提供を始める。安全性と長期保存性に優れ、有機溶媒として使われる難分解性の「1,4―ジオキサン=用語参照」を含む排水や地下水を浄化できる。 酸化剤で化学分解する方法に比べて処理コストや環境負荷の低減が可能な利点を訴求し、排水処理や水質浄化を手がける事業者の需要に応えていく。
下水や工場などの排水の浄化では、好気性微生物の働きを利用する活性汚泥法が広く採用されている。 また有害で分解が難しい化学物質に関しては、強力な酸化剤による化学分解や蒸留により分離後に産廃処理する方法などが用いられてきた。 しかし、これらの方法は燃料などのエネルギー消費が大量でコスト負担が大きく、環境負荷を引き起こす要因になる難点があった。
サンプル提供を始める製剤は、さまざまな化学物質を分解できる微生物として、大成建設が2014年に自然界から発見した「N23株」を使用。 さらにケイ・アイ化成の大量培養技術や乾燥技術を活用し、菌体濃縮液から粉末製剤を作ることに成功した。
さまざまな難分解性の化学物質を分解でき、有害な有機物を合成する遺伝子を持たず安全に使用できる。 1,4―ジオキサン溶液を使った実験で、粉末製剤が菌体濃縮液と同程度の分解性能を持つことを確認した。
また外気が透過しにくいフィルムなどの包装材で密封することで長期保存が可能となり、品質を長期間にわたり維持できる。 5度C程度の低温保管によって、2年程度経過しても当初の50%程度の活性状態を維持できることが分かった。
両社は今後、排水処理に課題を持つ化学や半導体の工場向けにサンプルを提供する。 これらの工場での評価を通じて、排水処理への適用を進める考え。
【用語】1,4―ジオキサン=無色透明な液体の有機化合物。 主に化学工場の排水に含まれる。 人の健康にかかる被害を生じる恐れがあるとして、2012年に排水基準の規制対象に追加された。 安定した分子構造で生分解性が低く、物理吸着性も低いため、残留が長期にわたる化学物質として知られている。