三洋貿易のゴム事業部は、タイのMuang Mai Guthrie(MMG)社製エポキシ化天然ゴム(ENR)などの拡販に注力する。ENRは天然ゴムを部分的にエポキシ化することで高機能化した素材で、電気自動車(EV)向け次世代タイヤや接着用途などで注目を集めている。 現在の生産は年間1200トンにとどまっているが、三洋貿易は将来が期待できる成長商材に位置づけ、日本国内および同社のネットワークを通じ提案を加速させていく方針だ。
MMG社はタイ南部に生産拠点を置き、ISO9001やISO14001、FSCなどの国際認証を取得。 森林資源の持続的利用や労働環境への配慮も進めており、環境・人権を重視したサプライチェーン構築に努めている。
天然ゴムの主な産地は東南アジアとされ、年間約75万〜80万トンが日本へ輸入される。 合成ゴムと比べ耐衝撃性に優れるため、主にトラックや航空機向けのタイヤに使用されている。
ENRは天然ゴム分子の二重結合にエポキシ基を導入したもの。 高極性化やガラス転移温度(Tg)の上昇、ガスバリア性や耐候性の向上が得られるのが特徴だ。 摩耗性に優れることから、重量増加が避けられないEV向けタイヤに適した素材として期待される。 特に将来的には、タイヤ内部の気密を保つインナーライナーへの適用が見込まれる。 従来の天然ゴムに比べて転がり抵抗を抑えられるため、エネルギー効率向上にもつながる。 三洋貿易では、自動車産業の構造転換に対応する商材として期待を寄せる。
さらに、ENRは極性ポリマーとの相溶性に優れ、PVCやニトリルゴム(NBR)などとのブレンドによる性能改善も可能とされる。 耐油性や制振性を生かし、タイヤやホース、制振材、靴底など幅広い分野で用途展開が見込まれる。 環境対応型の非油性高分子として、石油系合成ゴム代替の観点からも評価が高まっている。
MMG社はアクリル変性天然ゴムも上市。 ポリメチルメタクリレート(PMMA)を天然ゴムにグラフト重合させたもので、接着性や耐衝撃性に優れる。 テープや接着剤用途を中心に高機能材料としての可能性を訴求する。
三洋貿易は、これら高機能天然ゴムを国内市場のみならず米国やメキシコにも販売を広げる方針だ。