独マーレはアフターマーケット事業でも、車の電動化やデジタル化に対応した新たなサービス領域を広げている。電動車の心臓部であるバッテリーの診断やメンテナンスを可能にするツール「BatteryPro(バッテリー・プロ)」シリーズを整備工場向けに販売。 整備士を招いて研修を行う「グローバルトレーニングセンター」も独シュツットガルトに新設した。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)といった電動車の普及に伴い、整備の現場でも対応範囲の拡大が求められている。 マーレが展開するバッテリー・プロはあらゆる自動車メーカー、車種のデータベースを備える。 正規ディーラーだけでなく、独立系の整備工場であってもバッテリーを診断・整備できるように体制の構築を先駆けて支援する。
バッテリー評価は電動車の保守・修理や中古車の残存価値算定に欠かせない。 バッテリー・プロでは初期診断機能のほか、新車と比較した時の残容量などを基にバッテリーの健全性を評価する機能などを提供する。 診断結果のリポートも作成可能。 バッテリー冷却液の交換や冷却回路の修理・点検を行う機能も開発した。
アルンド・フランツ最高経営責任者(CEO)は同ツールについて「バッテリーの耐久性に関する懸念をデータに基づいて解決する」と意義を説明する。 診断プロセスのガイダンスも充実。 「熟練の経験がない整備士でも、テキストや写真で表示される手順に従って簡単に扱えるようにした」と同社担当者は語る。
グローバルトレーニングセンターは約1300平方メートルの研修スペースを有し、バッテリー・プロなどを設置したワークステーションを完備。 最大15人が実践的な環境で研修を受講できる。 オンライン講座や座学研修などを組み合わせ、整備士の技術レベルに応じた研修プログラムを提供する。
トレーニングセンターは、試験施設であるバッテリーテストセンターに隣接して設置した。 テストセンターではバッテリーの試作や修理、市販バッテリーのベンチマーク、劣化試験や電気・熱試験、過酷な環境下の走行を再現した試験などを実施できる。 両センターを隣接させることで、こうした最先端の知見を整備サービスにも生かして、新たな顧客ニーズに早期に応える狙いだ。
これを皮切りにフランスやイタリアなど他地域でも同様に研修施設を展開する計画だ。
マーレは自動車部品メーカーの枠を超え、ライフサイクル全体を通した顧客支援で電動化やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への歩みを加速する。 自動車産業が変革期にある中、新領域でも一歩先を行く競争力を磨き、存在感を示す。(名古屋・増田晴香が担当しました)