NEC、ネオアンチゲンがん免疫療法で製薬と協業

化学工業日報 2025/09/01 6頁 1121字】

 NECは、早期開発段階のネオアンチゲンがん免疫療法について、製薬企業と協業して後期臨床試験につなげていく。同社の開発品は、がん細胞の遺伝子変異によって生じるネオアンチゲンを標的とする治療法で、がん組織からNEC独自の人工知能(AI)解析技術で患者固有のネオアンチゲンを特定し、解析情報に基づきオーダーメイドでワクチンを製造する個別化ネオアンチゲンワクチン製剤。 頭頸部がんを対象にウイルスベクターを用いたがんワクチン「TG4050」の第1/2相臨床試験(P1/2)を欧米で実施しており、今後はAI解析をNEC、モダリティ製造を製薬企業という役割分担で共同開発先を検討する。

 同社の北村哲AI創薬統括部長がこのほど開催したメディア勉強会で方針を示した。 同社はIT企業でありながら、2019年にはノルウェーのバイオテクノロジー企業オンコイミュニティ(オスロ)を買収。 NECの既存技術を組み合わせてAIを用いた創薬事業に本格参入を果たした。 北村氏は、DNAシーケンサーで塩基配列をアルファベットで表現できることを例に挙げ、創薬の進歩について「人類(の遺伝子情報)が計算領域に入っている」と述べ、「計算になるとNECが強い」と自社の優位性を強調した。

 TG4050は、今年5〜6月に開始した米国臨床腫瘍学会(ASCO)2025で、術後のHPV陰性の頭頸部がん患者に投与したところ、16人全員が最低2年以上の無再発状態を維持したとするデータを発表。 手術で摘出したがん組織を用いてNECの予測モデルを用いて解析したところ、全ての患者で一つ以上のネオアンチゲン反応を検出したという。

 そのほか、腸で作用するバクテリアをベクターとして用いた経口投与のネオアンチゲンワクチン「NECVAX―NE01」について、トリプルネガティブ乳がんなど複数のがん種を対象にバスケット型のP1を実施中だ。

 同社AI創薬統括部の小野口和英氏は、NECの開発品がAI解析によるネオアンチゲンの特定がワクチンの効果を左右することから「AIが製剤の一部になっている」と説明した。

 一方、オーダーメイドのワクチンができるまでに数カ月かかるリードタイムが課題。 AI解析にかかる時間は数日だが、その後のワクチン生産と品質検査に時間を要しているとして、規制当局と相談しながら効率化を図り、「業界目標としては1カ月の短縮を目指している」と語る。

 今後は、NEC単独では実施が難しい大規模臨床試験や社会実装に向けて製薬企業との共同開発を視野に入れる。 導出する際には、実装後もAI解析のノウハウはNECが保持した状態でモダリティの権利を移管させ、解析情報を導出元である製薬企業に提供するビジネスモデルを想定する。


【化学工業日報】その他の記事を読む

※見出しをクリックすると全文をご覧になれます。(全文記事閲覧と同様の課金になります)