SGホールディングス(HD)傘下で総合物流サービスを展開するワールドサプライはこのほど、ITベンチャーのナブラワークス(東京都港区、本島昌幸社長)と共同で、千葉県内の大型商業施設において商業施設入退館管理システムの実証実験を開始した。実証ではAI顔認証システムを活用し、納品受け付け業務の効率化と入退館管理の高度化によるセキュリティ強化の両立を目指す。 ワールドサプライによれば、国内の商業施設で納品業者受け付けに顔認証システムを導入するのは初だという。
商業施設の納品受け付けは、地下搬入口など暗く混雑した環境で行われることが多く、紙台帳やICカードの手渡しによるアナログ管理が主流だ。 このため、本人確認の不確実性や受け付け渋滞によるドライバーの待機時間発生など、セキュリティと業務効率の両面で課題を抱えている。
ワールドサプライはこうした現状を踏まえ、商業施設での館内配送などを請け負うFLS(施設後方支援)事業の一環として、ナブラワークスのAI顔認証技術を活用した無人納品システムの実証に着手した。
ナブラワークスは、暗所や混雑、マスク着用時でも高精度に識別可能なAI顔認証技術を有しており、これまで会社や施設の出退勤システムなどに活用されてきた。 納品受け付けでは、ドライバーなどの来訪者が初回に顔認証写真を登録すると、以降は端末に顔をかざすだけでICカードの貸出・返却が完了する。 これにより、荷物を抱えながら手書きで情報登録する負担や、記帳待ちの行列を解消できる。 実証ではICカード管理システムを併用するが、将来的にはカード不要の「顔パス」による完全ハンズフリー化を目指す。 入退館記録のデジタル化により、なりすましやICカード持ち帰りといった不正リスク低減や履歴検索性の向上も期待できる。
実証は9月1日から26日まで千葉県の大型商業施設で行い、認証精度、受け付けスピード、従来比での受け付け業務の省力化・効率化、ドライバー拘束時間削減などの効果を検証する。
ワールドサプライは、実証結果を踏まえ、同社の商業施設サービスの一つとして都市再開発でリニューアルされる商業施設などへの提案を進める方針だ。