UACJの福井製造所(福井県坂井市)では、伸長需要に向けた活動を加速する。生産面では、デジタル化(DX)を圧延工程全体に広げた。 「生産性や歩留まり向上効果が確認できている」(坂野公則福井製造所長)ことから、ボトルネックを解消し能力増強につなげる。 原料調達では、使用ずみアルミ缶(UBC)をさらに活用していく考えで、建設中の使用ずみアルミ缶用新規リサイクル設備の試運転を25年秋から開始し、26年1月から本格稼働させる。
福井製造所は、UACJの板生産の国内全体の5割近くとなる年産30万トンの能力を有する。 1983年に操業を開始し、現在は主力のアルミ缶材、自動車材の量産を担う。 同製造所は福井市と坂井市にまたがる工業団地「テクノポート福井」の中で最大の工場となり、協力会社も含めると、同ポート全体の2割以上となる1000人程の雇用を創出している。
福井製造所では、アルミ缶材や自動車材に加え、近年は半導体製造装置向け厚板やリチウムイオン2次電池(LiB)正極集電体用などのアルミ箔材(箔地)の生産量も増加する。 昨年に事業本部を設置した航空宇宙・防衛材関連の立ち上がりに加え、大型受注を獲得した欧州市場向けアルミ缶材の生産も開始した。 坂野所長は「現有機能の最大化を図り伸長需要に対応する」と話す。
圧延工程のDX化は、これまで鋳造設備と冷間圧延1機で運用していたDXシステムを熱間圧延機と残りの冷圧延設備に実装したもので、設備稼働状態と各種実績の解析を可能にした。 今後は、製造所内の生産計画や設備保全の最適化も視野にデータベースの再構築と機能拡充を進めていく考え。 将来は、AI(人工知能)の活用に向けた議論も始めている。
建設を進めるアルミ缶リサイクル設備は、UBCの処理を行いリサイクル原料の高品質化を実現する。 21年に協業関係を結んだ山一金属(静岡県長泉町)との合弁会社で26年1月からの稼働予定。 生産時の二酸化炭素(CO2)排出量の多いアルミ地金の使用量が削減できることから「環境優位性をさらに高めたい」(坂野所長)。